MVPは最小機能より「最小価値」で考える

MVPを『機能を削ること』と捉えると、価値が薄いものができやすいです。本記事では、最小機能ではなく『最小価値』から逆算して、何を残し何を捨てるかを決める考え方を紹介します。

yap編集室|

MVPを「機能を削ること」と捉えると、価値が薄いものができやすいです。最小機能ではなく「最小価値」から考えることで、検証の精度が上がります。


この記事でわかること

  1. MVPの誤解: なぜ「機能を削る」だけでは失敗するのか
  2. 最小価値の考え方: 顧客視点で「価値」を定義し、逆算する手法
  3. MVP設計の実践: 何を残し、何を捨てるかを決めるフレームワーク

基本情報

項目内容
トピックMVP(実用最小限の製品)設計
カテゴリプロダクト開発ガイド
難易度初級〜中級(起業家・PM向け)

MVPとは何か

定義と背景

MVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品) とは、初期の顧客を満足させ、将来の製品開発に役立つ有効なフィードバックや実証を得られる機能を備えた製品のバージョンを指します。

この用語は、2001年にフランク・ロビンソンによって考案・定義され、その後スティーブ・ブランクとエリック・リースによって広められました。

MVPが重要な理由

2024年のGoodFirmsの調査によると、回答企業の91.3%がすでにMVPアプローチによる製品ローンチを経験していると報告されています。

CB Insightsの調査では、スタートアップの失敗理由の第1位(42%)が「市場ニーズの欠如」でした。MVPが広まった主な理由は、この失敗を減らせる点にあります。


MVPでよくある3つの誤解

誤解1: 機能を削ればMVPになる

「MVPを急いで作らなきゃ」と慌てて動いても、「あれも必要じゃないか」「せっかくならここも作り込もう」と議論が止まらず、気づけば初期リリースが数か月ずれ込んでしまうケースがあります。

MVPは「機能を削る」ことが目的ではありません。最小限の価値を提供することが目的です。

誤解2: 未完成品でいい

"Minimum(最小限)"でありながら、"Viable(実用可能)"でなければならない点も重要です。

単なる未完成品ではなく、初期のユーザーが「これなら使う価値がある」と感じる最低限の価値を提供できて、初めて正しい学びが得られます。

誤解3: 全員にとっての「最小」がある

「Minimum」と「Viable」は、人によって意味が異なり、問題を引き起こします。チームで共通認識を持たないまま進めると、期待値のズレが生じます。


最小価値から逆算する考え方

なぜ「最小価値」なのか

機能ではなく「価値」を起点にすることで、以下のメリットがあります。

機能起点価値起点
作りやすいものを作る顧客が求めるものを作る
削れるものを削る必要なものだけ残す
リリース後に検証検証項目が明確

価値を定義する3つの問い

MVPを設計する前に、以下の3つの問いに答えます。

1. 顧客の現状プロセスのどこを置き換えるのか

顧客が今どうやって課題を解決しているか(または我慢しているか)を理解し、そのプロセスのどの部分をMVPで置き換えるかを明確にします。

2. 導入に必要な前提は何か

MVPを使ってもらうために、顧客側で何が必要か(データ連携、社内承認、運用体制など)を洗い出します。前提条件が多すぎると、検証が進みません。

3. 誰が最初に使い始めるのか

「全員」ではなく、最初の1人を具体的にイメージします。その人が「使いたい」と思う最低限の価値は何かを定義します。


MVP設計の実践フレームワーク

ステップ1: 顧客課題の深掘り

質問回答例
顧客は今どうしているかExcelで手動管理
何に困っているかミスが多い、時間がかかる
理想の状態は自動で正確、すぐ終わる

ステップ2: 提供価値の定義

「困っていること」を解決する最小の価値を定義します。

NG例:

全部自動化して、すべてのミスをなくし、時間を10分の1にする

OK例:

最も頻度が高い作業1つを自動化し、そこでのミスをゼロにする

ステップ3: 検証したい仮説の明確化

MVPで何を確かめたいのかを明確にします。

仮説の種類
課題仮説本当にこの作業に困っているか
価値仮説この機能で課題は解決されるか
価格仮説この価格で払ってもらえるか
チャネル仮説この方法で顧客にリーチできるか

ステップ4: 機能の優先順位付け

検証仮説が明確になったら、その検証に必要な機能だけを選びます。

必須: この機能がないと価値が成立しない
あると良い: 価値を高めるが、なくても検証可能
不要: 今回の検証には関係ない

MVPの種類と使い分け

プロトタイプの種類

種類説明検証できること
ランディングページサービス説明と申込フォーム需要の有無
デモ動画製品の使い方を動画で説明コンセプトへの反応
コンシェルジュ手動でサービスを提供価値と運用フロー
オズの魔法使い見た目は自動、裏は手動UXと価値
限定機能版コア機能のみ実装実際の利用と定着

Dropboxの事例

最も有名な事例が、Dropboxです。彼らは事業の初期段階で、完成されたソフトウェアを開発する代わりに、サービスのコンセプトを説明する2分間の動画をMVPとして公開しました。

この動画だけで、サービスローンチ前にもかかわらず16,000人以上がベータ版へ事前登録しました。


MVPでやりがちな3つの落とし穴

落とし穴1: 機能を盛り込みすぎる

早く学ぶことが何より重要です。「Minimum」Viable Productという言葉の通り、本当に「Minimum」な機能に絞ることが必要です。

落とし穴2: 検証に必要な質を落としすぎる

開発スピードにこだわりすぎると、「検証に必要な質」まで落としてしまうことがあります。価値提供のために必要な質は見極めなければいけません。

落とし穴3: 用語の誤解

「Minimum=最小」と「Viable=実行可能」は、人によって意味が異なります。チームで定義を揃えてから開発を始めることが重要です。


よくある質問(FAQ)

Q1. MVPはどのくらいの期間で作るべきですか?

検証したい仮説によりますが、2〜4週間を目安にします。これ以上かかる場合は、スコープを絞りすぎていないか確認してください。

Q2. BtoBでもMVPは有効ですか?

有効です。ただし、BtoBでは「コンシェルジュ型」(手動でサービス提供)から始めることが多いです。まず1社に深く入り込み、課題と価値を検証します。

Q3. MVPで顧客からお金を取るべきですか?

可能であれば取るべきです。有料で使ってもらえるかどうかは、価値の強さを測る重要な指標です。無料だと本気度の低い顧客が集まり、フィードバックの質が下がります。

Q4. MVPで失敗した場合、どうすればいいですか?

失敗は学びです。「なぜ使われなかったか」「どこで離脱したか」を分析し、次の仮説を立てます。MVPの目的は成功することではなく、学ぶことです。

Q5. MVPとプロトタイプの違いは何ですか?

プロトタイプは「見せるもの」、MVPは「使ってもらうもの」です。プロトタイプはコンセプト確認に使い、MVPは実際の価値検証に使います。


まとめ

主要ポイント

  1. 機能ではなく価値から考える: 「最小機能」ではなく「最小価値」を定義し、そこから逆算する
  2. 検証仮説を明確に: MVPで何を確かめたいのかを先に決め、必要な機能だけを選ぶ
  3. 早く学ぶ: 完璧を目指さず、早くリリースしてフィードバックを得ることを優先する

次のステップ

  • 現在のMVP計画を「価値起点」で見直す
  • 検証したい仮説を1つに絞って明文化する
  • 最初の顧客を1人、具体的にイメージする

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参考リソース


この記事を書いた人

yap

yap編集室

株式会社yapの新規事業開発コンサルタントたちによる編集チームです。新規事業の仮説検証・PMF設計、営業推進に関する知見を、さまざまなプロジェクト支援の経験をもとに発信しています。