最初の事例を作るための順番

『事例がないから売れない』は本当ですが、事例は待っていても生まれません。本記事では、最初の実績を作るための順番と、事例をマーケ素材ではなく検証データとして扱う視点を解説します。

yap編集室|

「事例がないから売れない」は本当ですが、事例は待っていても生まれません。最初の実績を作るための順番を理解し、戦略的に動くことが重要です。


この記事でわかること

  1. 最初の顧客を選ぶ基準: 課題が強く、意思決定が速い顧客の見つけ方
  2. 短期間で価値を出す方法: 提供範囲を絞り、成果を可視化する手法
  3. 事例を検証データとして活用する視点: マーケ素材を超えた事例の使い方

基本情報

項目内容
トピック最初の導入事例の作り方
カテゴリ営業・マーケティングガイド
難易度初級〜中級(営業責任者向け)

なぜ事例がないと売れないのか

BtoBの購買心理

BtoBでは、導入担当者は「失敗できない」というプレッシャーを抱えています。事例がないサービスを導入して失敗すれば、自分の評価に直結します。

そのため、同業他社の成功事例があることで、以下の効果があります。

効果説明
リスク軽減「他社も使っている」という安心感
説明コスト削減社内説明の材料になる
期待値設定何が達成できるかの具体的イメージ

事例がない状態の打開策

事例がない状態では、以下のアプローチで補完します。

  • 創業者・チームの実績を強調
  • 類似領域での経験を示す
  • 小さく始められる提案をする

しかし、これらは「事例がない状態を乗り越える」ための一時的な策であり、早期に事例を作ることが本質的な解決策です。


最初の顧客を選ぶ基準

「最大手」を狙わない理由

最初の顧客に大手企業を狙いがちですが、これは得策ではありません。

大手を狙うリスク説明
意思決定が遅い稟議に数ヶ月かかる
要求が多いカスタマイズ要求で本質がブレる
期待値が高い十分なサポートがないと失敗リスク

理想的な最初の顧客の条件

最初の実績を作るなら、課題が強く、意思決定が速く、成果が出やすい顧客を狙います。

条件具体的な目安
課題の強さ今すぐ解決したい、予算確保済み
意思決定スピード1週間〜1ヶ月で契約できる
成果の出しやすさスコープが明確、成功指標が測れる
協力的な姿勢フィードバックをくれる、改善に協力

最初の顧客を見つける方法

アプローチ1: 自分のネットワークから始める

多くの場合、営業や代表者の人脈に頼って最初の顧客を獲得します。

  • 前職の同僚・取引先
  • 友人・知人の紹介
  • SNSでのつながり

アプローチ2: 顧客理解を深める

顧客がどんな人で、どんな欲求があるかを正しく理解し、高い価値を感じてもらえるような製品を届けることが重要です。

「顧客獲得を簡単に実現する魔法などありません。しかし確かに言えることは、ユーザーの声を無視し自分の直感だけに頼ると、痛い目を見るということです。」

アプローチ3: スケールしないことをやる

Y-Combinator創業者のPaul Grahamは「Do Things that don't scale(スケールしないことをやれ)」と言っています。

最初の数ヶ月間、ユーザーのニーズや購入の判断に影響する要素を知る手がかりになり得ることはなんでもすることが重要です。

  • ポストカードを届ける
  • カフェで話しかける
  • SNSでメッセージを送る

短期間で価値を出す方法

提供範囲を絞る

最初の顧客には、全機能を提供する必要はありません。むしろ、スコープを絞ることで、短期間で価値を出しやすくなります。

広いスコープ絞ったスコープ
全業務を対象1つの業務から開始
全部門を対象1チームから開始
完璧な機能コア機能のみ

成果を数値で示す

事例として使うためには、Before/Afterを数値で示せることが重要です。

指標カテゴリ
時間作業時間が週10時間→2時間に短縮
コスト外注費が月50万円→20万円に削減
品質エラー率が5%→0.5%に改善
売上対象業務の売上が20%増加

事例の取り方

事例に含めるべき要素

要素内容
企業概要業種、規模、背景
課題導入前に抱えていた問題
選定理由なぜこのサービスを選んだか
導入プロセスどのように導入したか
成果数値で示せる効果
今後の展開追加活用の予定

事例インタビューの進め方

## 事例インタビューガイド

### 導入前の状況

1. 当時、どのような課題を抱えていましたか?
2. その課題はどのくらい深刻でしたか?
3. 他にどのような解決策を検討しましたか?

### 選定理由

4. なぜ当社のサービスを選んでいただけましたか?
5. 決め手になったポイントは何でしたか?

### 導入と成果

6. 導入はスムーズに進みましたか?
7. 具体的にどのような成果が出ましたか?(数値で)
8. 導入前と比べて、どのような変化がありましたか?

### 今後

9. 今後、どのように活用を広げていきたいですか?
10. 同じ課題を持つ企業へのアドバイスはありますか?

事例を検証データとして扱う視点

マーケ素材としてだけ使わない

事例は「営業資料に載せるマーケ素材」だけでなく、プロダクト改善のための検証データとして活用できます。

活用方法具体的なアクション
課題の検証この課題は他社にも共通するか
価値の検証この成果は再現可能か
価格の検証この価格で満足度は高いか
チャネルの検証どのようにこの顧客を獲得したか

失注理由も記録する

成功事例だけでなく、失注の理由も重要なデータです。

  • なぜ選ばれなかったか
  • 競合との違いは何だったか
  • 価格・機能・信頼性のどれが課題だったか

次の商談が楽になる状態を作る

事例の見せ方を工夫する

見せ方効果
同業種の事例「うちにも使える」と思ってもらえる
同規模の事例導入ハードルが下がる
数値付きの事例期待成果が具体的になる

事例記事・動画の作成

テキストだけでなく、動画や詳細なケーススタディを作成すると、商談での説明コストが下がります。


よくある質問(FAQ)

Q1. 最初の顧客に無料で提供すべきですか?

可能であれば有料で提供すべきです。無料だと本気度の低い顧客が集まり、フィードバックの質が下がります。ただし、「成功報酬型」や「大幅割引」で始めることは選択肢になります。

Q2. 事例掲載の許可をもらえない場合はどうすべきですか?

社名を伏せた「匿名事例」でも効果はあります。「某大手製造業」のように業種と規模を示すだけでも、見込み顧客の参考になります。

Q3. 最初の事例が出るまで営業活動をすべきですか?

並行して進めるべきです。事例がない状態での営業は難しいですが、見込み顧客との対話を通じて課題理解が深まり、プロダクト改善につながります。

Q4. 事例の数はどのくらい必要ですか?

業種やセグメントごとに1-2社あれば、営業は大幅に楽になります。「製造業で3社、サービス業で2社」のように、ターゲット業界ごとに事例を揃えることを目指します。

Q5. 顧客が事例協力に消極的な場合は?

導入成果を一緒に可視化するプロセスを提案します。「成果をまとめて社内報告に使えるようにしましょう」という形で、顧客にもメリットがある形にします。


まとめ

主要ポイント

  1. 最初の顧客は「最大手」より「課題が強く意思決定が速い」顧客を狙う: 短期間で成果を出せる顧客を選ぶ
  2. 提供範囲を絞って短期間で価値を出す: 数値・プロセス・Before/Afterを取る
  3. 事例をマーケ素材+検証データとして活用する: 次の商談を楽にし、プロダクト改善にも活かす

次のステップ

  • 見込み顧客リストを「最初の事例候補」の基準で並べ替える
  • 最初の顧客候補に「限定スコープ」での提案を準備する
  • 事例インタビューガイドを作成しておく

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参考リソース


この記事を書いた人

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株式会社yapの新規事業開発コンサルタントたちによる編集チームです。新規事業の仮説検証・PMF設計、営業推進に関する知見を、さまざまなプロジェクト支援の経験をもとに発信しています。