外部との共創やパートナー協業は、期待値の食い違いで破綻しがちです。責任の所在が曖昧なまま進めないための合意ポイントを整理することが成功の鍵になります。
この記事でわかること
- 共創が失敗する原因: 期待値の食い違い、権限の曖昧さ、コスト負担問題
- 役割分担の明確化: 企画・検証・実行・運営のフェーズごとの担当整理
- PoCを成功させる設計: スピードとガバナンスを両立させる合意ポイント
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| トピック | 外部パートナーとの共創 |
| カテゴリ | パートナーシップガイド |
| 難易度 | 中級(事業開発担当者向け) |
なぜ共創は失敗しやすいのか
オープンイノベーションの定義
オープンイノベーションとは、企業が外部の人や機関と協力してイノベーションを進める取り組みです。
組織内部のイノベーションを促進するために、意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用し、その結果組織内で創出したイノベーションを組織外に展開する市場機会を増やすことと定義されています。
共創が失敗する3つの原因
| 原因 | 具体例 |
|---|---|
| 期待値の食い違い | 成果物のイメージが異なる |
| 権限の曖昧さ | 誰が最終意思決定するか不明 |
| コスト負担の不明確 | 「こんなにコストがかかるとは」と紛争 |
性質やスピードが違う大手企業とスタートアップの協業は決して容易ではなく、PoCに辿り着くまでも困難であるうえに、プロジェクトとして成り立ったとしても、スピードや効果検証に苦労することが多々あります。
PoC(概念実証)の基本
PoCとは
PoC(Proof of Concept) とは概念実証を意味し、仮説やコンセプトをテストするための試験的なプロジェクトを指します。
大手企業とスタートアップとのPoCでは、協業領域模索後の試験段階として大手企業の既存事業とのシナジーをみることや、新規事業としての協業実現性の模索を目的に実施します。
「PoC貧乏」問題
「PoC貧乏」とは、契約もしないままに、事業会社からいろいろな試作を無償で受けて、結局、ビジネスにはつながらない状態のことをいいます。
このようなことはオープンイノベーションの推進上、好ましくないということから、最近ではPoC段階でも契約すべきことが推奨されています。
役割分担を明確にする
フェーズごとの役割整理
共創では、企画・検証・実行・運営のどこを誰が担うのかを明確にすることが重要です。
| フェーズ | 大企業の役割 | スタートアップの役割 |
|---|---|---|
| 企画 | 課題定義、予算確保 | ソリューション提案 |
| 検証(PoC) | 評価基準設定、社内調整 | 開発・実装、技術サポート |
| 実行 | 導入推進、顧客接点提供 | 本番運用、改善 |
| 運営 | 拡大判断、追加投資 | サービス品質維持、機能拡張 |
意思決定権限の明確化
| 決定事項 | 決定者 | 決定タイミング |
|---|---|---|
| PoCの開始 | 大企業の事業部門長 | 企画承認時 |
| PoCの成功判定 | 両社の担当役員 | PoC終了時 |
| 本格導入の判断 | 大企業の経営層 | PoC評価後 |
| 契約条件の合意 | 両社の法務・経営 | 本格導入決定後 |
コスト負担のベストプラクティス
基本的な考え方
PoCにかかる人件費や検証設備費をどちらが、どの程度負担するかを明確にしておかないと、後々「こんなにコストがかかるとは思わなかった」と不満が出る恐れがあります。
推奨モデル
実証実験に進む際のコストは大手企業が持ち、スタートアップは開発に伴う人材を提供するという協業の仕方がベストプラクティスとして定着しつつあります。
| コスト項目 | 大企業負担 | スタートアップ負担 |
|---|---|---|
| 検証環境・設備 | ○ | - |
| データ提供 | ○ | - |
| 開発人員 | - | ○ |
| プロジェクト管理 | 共同 | 共同 |
| 法務・契約 | 各自 | 各自 |
PoCを成功させる7つの質問
大手企業とスタートアップのPoC開始前に、以下の質問に答えられるようにしておきます。
1. 何を検証したいのか
PoCを通して、何を検証したいのかを明確にしましょう。曖昧な目的で始めると、評価もできません。
2. 成功の定義は何か
スタートアップにPoCの成功評価基準やタイムラインを明確に示すことで、より透明性のあるディスカッションができるようになります。
3. 期間と予算は決まっているか
期限と予算を先に決めることで、スコープの肥大化を防ぎます。
4. 誰が意思決定するのか
最終的な判断を下す人を両社で明確にしておきます。
5. 知財の取り扱いは合意しているか
共同した製品やサービスに対する権利や知財を明確にしなければ、後々裁判問題にまで発展するケースがあります。
6. 情報の取り扱いは決まっているか
守秘義務、データの帰属、公開範囲などを事前に合意します。
7. 次のステップは明確か
PoCが成功した場合、失敗した場合、それぞれのネクストアクションを決めておきます。
巻き込み力を高める
ミドル層の重要性
オープンイノベーションが進んでいくと、重要な役割を担うのがコーディネーター役のミドル層です。
全社に幅広いコネクションを持っている中堅社員が、全社を巻き込めるかがオープンイノベーションを失敗させない上で重要です。巻き込み力が弱いと、担当者ばかりがコミットして、現場社員の不満ばかりが大きくなることもあります。
経営トップのコミットメント
経営トップが組織全体のビジョン・戦略を明確に示した上で、オープンイノベーションを推進する意義・目標も明確化し、必要十分なリソースを配分した上で、それを社内外へ積極的に情報発信することも効果的です。
よくある質問(FAQ)
Q1. スタートアップ側として、大企業との協業で気をつけることは?
意思決定スピードの違いを織り込んでおくことが重要です。大企業は稟議に時間がかかります。また、「PoC貧乏」を避けるため、無償での過剰な対応は避け、契約ベースで進めることを推奨します。
Q2. 大企業側として、スタートアップとの協業で気をつけることは?
スタートアップは限られたリソースで動いています。要求を詰め込みすぎず、スコープを明確にして短期間で成果が出る設計にしてください。また、社内の意思決定を迅速にする体制を整えることも重要です。
Q3. PoCが成功したのに本格導入にならないのはなぜですか?
PoC担当部門と導入決定部門が異なることが原因の場合が多いです。PoC開始時点で、本格導入の決定者を巻き込んでおくことが重要です。
Q4. 知財の取り扱いでもめないためには?
PoC開始前に、以下を書面で合意しておきます:① 各社が持ち込む既存知財の帰属、② PoC中に生まれた知財の帰属、③ 商用化時のライセンス条件。
Q5. 共創パートナーの見つけ方は?
業界のアクセラレーター、VC主催のマッチングイベント、オープンイノベーションプラットフォームなどを活用します。紹介ベースの方が信頼関係を築きやすい傾向があります。
まとめ
主要ポイント
- 期待値の食い違いを防ぐ: PoC開始前に「何を検証し、何をもって成功とするか」を明確に合意する
- 役割とコストを明確に: 企画・検証・実行・運営のフェーズごとに担当とコスト負担を決める
- 意思決定者を巻き込む: PoC担当者だけでなく、本格導入の決定者を早期に巻き込む
次のステップ
- 現在検討中の共創案件について、7つの質問に答えられるか確認する
- 役割分担表を作成し、パートナー候補と共有する
- 知財・情報の取り扱いについて法務に相談する
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参考リソース
この記事を書いた人
yap編集室
株式会社yapの新規事業開発コンサルタントたちによる編集チームです。新規事業の仮説検証・PMF設計、営業推進に関する知見を、さまざまなプロジェクト支援の経験をもとに発信しています。